約束手形の本を読んでると、ワットの裏書きの連続についての法的効力がよく分かります。
講師 yuuji <urashima@grsj.org> 13 May 2002
約束手形の本を読んでると、ワットの裏書きの連続についての法的効力がよく分かります。
ワットは設権証券であり、無因証券に類似していて、ワット券面そのものが債務そのものを表象していて、その債務の中身とは「乙は甲より上記ワット高を借り受けました。ワット会員及びワット友の会より本券の提示をもって返済請求がなされた場合、市民共同発電所債あるいは提示者と合意しうる財ないし役務の支払いを約束します。
本券はワット会員の間で支払い手段として受領されます(ワット友の会)」
要するに財や役務に特化した借用証書です。(借金の証文ではなく)たとえば、
甲Aが振り出し人で、乙Bがワット券の受け取り人になります。
Aは、
> 提示者と合意しうる財ないし役務の支払いを約束すること(借用)でBに「請求権」=債権(借金ではなく)を与えたことになります。
通常、約束手形では、満期日に手形の最終持参人に記載金額が指定銀行で支払われるのですが、ワットの場合はお金ではない、上記の「合意しうる財ないし役務」なわけです。以後、Bは何かをCから買ってこのワット券で支払うことで、Cにワット券が移動し、取り引きの連鎖が裏書きに記録されていきます。
最後のワット券所持人Zが、Aに対して精算=償還を求めたいと思った時、ZはAと面識なく連絡先も知らないし、裏書き記載のBCDEFにも会ったこともないし、どこにいるのかもわからない、ワット勧奨場への登録もない場合があります。(アクセス権の切断)
ZはAへの精算取り引き要求は満たされないが、他のワット会員には請求権を持ちます。特に直前取り引きのYには本券による買い物の申し出が可能でしょう。そうして、YはXに、XはWに、WはVに、ワット券で買い物ができるでしょう。順次遡って、Bだけが面識あるAに精算取り引きを申し入れて、本券は消滅します。
手形金が満期日に当座貸越残高が満たなくて落ちないと不渡りになります。
手形の場合は不渡りになってはじめて所持人が裏書人に対して遡って請求できる遡求権を行使できます。ワットの場合は満期日の設定がないと同時に返済猶予期間の提示もないので即時精算も予定されていますので、2者間信用の連鎖を逆に遡って請求できる遡求権が常に保証されていると言えます。
従って、Aが実際に返済能力がなくなったり、ワット友の会から退会したとしても、最初にAに信用を与えて、ワット券の発券(マネーの発生)を承認したBに債務の遡求がなされれば、Bが最終的に本券を精算引き受けして、リスクを負うことになります。債務当事者であるAは返済不能なのですから。この教訓は見知らぬ人から新発券を受け取ると最終的に自分がリスクを取ることになるということです。また、リスクとべネフットのつり合う範囲内に取り引き額がおさまっていくということだと思います。
フリーマーケットの出店などで、フリーのお客から新発券を受ける時は、発券者にアクセスする方法を(その人の選択で)提示(電話番号か、名刺か、メルアドなど)してもらうか、券面に記載してもらうといいかもしれません。
免許証の提示を持って本人確認とする地域通貨グループがあると聞きますが、婚外子差別などの元凶になっている「戸籍データベース」を利用することは住民基本台帳のIT化で、現実のものとなった「ビッグブラザー」に組みする行為だと思います。それより発券希望者にそのワットを何で償還するのか、を聞いたり、ワット勧奨場への登録をうながしたりすることで十分と思います。